離婚の際に、一番もめるケースが多いのが「財産分与」
現金や証券など価値の計りやすいものは、そのまま離婚時の分与の割合通り、2分の1ずつという考えが一般的です。
ただ、家やマンションなどの不動産を、離婚の財産分与として考えた場合、
- 住宅ローンの残債の有無
- 離婚後に家を売却するのか、住み続けるのか?
- 住み続けるなら、夫と妻どちらが住むのか?
など、離婚時には様々な問題が発生します。
このように、離婚が原因で家を手放すということは、非常に悩ましい問題です。
しかし、夫婦共有の不動産の場合、「家の名義は夫、連帯保証人が妻」となっているケースも多く、そのままにしておくと後々トラブルが発生する可能性が非常に高くなります。
後々のトラブルのことを考えると、できれば離婚時に家を売却してスッキリとさせておきたいところ。
この記事では、離婚をきっかけに家を売却する際に、夫が知っておくべきことをまとめています。
1.家の売却後に、住宅ローンが残るか残らないかを確認
離婚で家を売却する際に一番に確認しておきたい点が、家の売却後に住宅ローンの残債が残るのか残らないかということ。
つまり、
「アンダーローン」か「オーバーローン」かの確認です。
離婚で家の売却を検討する際には、まず一番に住宅ローンの残債と、所有する家の売却価格(査定価格)を調べるようにしてください。
アンダーローンとは、家やマンションを売却した場合に、売却価格よりも住宅ローンの残債が下回ることをいいます。この場合、売却価格から残債を差し引き、残った利益を離婚時の財産分与として夫婦で分け合うことができます。
オーバーローンとは、家やマンションの現在の価値(査定価格)よりも、住宅ローンの残債が上回っている状態のことをいいます。融資元である金融機関の抵当権が設定されているため、離婚のためといえども、勝手に家を売却することはできません。
住宅ローンの残債の確認をする
まずは、現時点で住宅ローンがいくら残っているのか残債を確認しておきましょう。なお、残債を確認する方法については、以下の方法があります。
銀行などの金融機関は、インターネットバンキングで確認
銀行などの一般的な金融機関の場合、インターネットバンキングを利用することで、住宅ローンの残債を確認することができます。
インターネットバンキングを利用するには手続きが必要となりますが、申込みもインターネット上ですることが出来ますし、手数料等を取られることもありません。
「取引銀行名+インターネットバンキング」などで検索をすれば、手続きができるページを探すことができます。
【フラット35】住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)には、電話で照会できます
住宅ローンにフラット35などを利用している場合、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)に残高などが照会できるお客さま専用ダイヤルが設置されているので、電話で残高を照会できます。
お客さま専用ダイヤル | 0120-0860-16 |
個人情報保護の観点から、残高を照会できるのは契約者本人のみ。
また、照会時には、本人確認のための情報や、返済金の引落口座番号の情報などが必要となります。
引落口座の番号が分かるように、通帳を準備してから連絡するようにしてください。
住宅ローン残高証明書で確認する
住宅ローンを借りていると、各金融機関から「住宅ローン残高証明書」が送付されてくることがあります。
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」や「融資額残高証明書」と記載されている場合もあります。それらの書類を確認すれば、あらかたの残債を確認することができます。
証明書は、毎年10月中旬くらいから下旬にかけて各金融機関から送られてきます。紛失した場合は、再発行してもらうことも可能です。
自宅の売却価格(査定価格)を確認する
次に、所有する家やマンションの売却価格(査定価格)を確認します。
家やマンションの売却価格(査定価格)を調べるには、以下の2通りの方法があります。
不動産鑑定士に不動産鑑定を依頼する「鑑定評価」
不動産鑑定士に家の鑑定を依頼し、不動産鑑定書を作成してもらう方法です。
不動産鑑定士は、鑑定評価額に法的に責任を負うことになりますので、より正確な評価額を知ることができます。
ただ、鑑定評価は、相続税・贈与税等の税務申告や不動産に関連する訴訟など、不動産の価値をより正確に証明するために利用されるものであり、一般的な家の売却ではそこまでする必要が無い場合が多いです。
不動産会社が売却価格を想定する不動産査定
一般的に家の売却価格を知るために利用されているのが、不動産会社の不動産査定です。
家の状態や築年数、自宅エリアの類似物件の過去の販売実績、価格などを照らし合わせながら、実際にどのくらいの不動産価値があるかを査定する方法です。
ただ、査定価格は各不動産会社によってまちまち。より正確な売却価格を把握するには、複数の不動産会社の査定価格を比較することが最重要です。
そのため、最近では、複数の不動産会社に一括で査定依頼ができる、ネットの不動産一括査定サービスが利用者を急激に伸ばしています。
不動産一括査定サービスの中でもおすすめは「イエウール」
日本最大級の不動産一括査定サービスで、提携不動産会社は全国で1,400社以上。大手不動産会社も数多く登録されており、売却査定をするのに非常に優れたサービスです。
査定依頼に対して不動産会社が費用を負担するシステムのため、査定を依頼するユーザーは無料で利用することができます。
2.離婚時のオーバーローンの対処法
離婚時の財産分与で一番やっかいなのは、自宅を売却しても残債が残る「オーバーローン」の状況のとき。
オーバーローンの時の対処法としては、
- 住宅ローンの残債を現金で支払う
- 夫、妻のいずれかが、離婚後も住宅ローンを支払い続ける
- 自宅を任意売却し、住宅ローンを調整する
この3通りの方法しかありません。
住宅ローンの残債を現金で支払う
住宅ローン残債が、2,000万。家の売却価格が1,500万だった場合、差額の500万を現金で金融機関に支払います。
その後、残ったプラス財産について離婚時の財産分与を計算します。
夫、妻のいずれかが、離婚後も住宅ローンを支払い続ける
離婚後も現在の家をどちらがか住居として使用し、残った住宅ローンは協議の上、決められた者が支払っていくケース。
ただ、現実問題として、夫名義で組んだ住宅ローンの住宅を妻の名義に変更することは、銀行などの金融機関からの承諾を取り付けるのは非常に難しいです。妻によほど安定した収入が無い限りは現実的には厳しいといえるでしょう。
そのため、離婚後も住宅ローンは夫が支払い、妻が住居の使用料として賃料という形でいくらかを毎月支払うケースもあります。
また、所有者名義はそのままで妻が自宅に住み、夫がローンを支払っていくケースでは、将来的にリストラや事故などによって住宅ローンの支払いが厳しくなってしまったというケースも多く見受けられます。
自宅を任意売却して、住宅ローンを調整する
離婚が原因などで住宅ローンの支払いが厳しくなってしまった場合、「任意売却」という方法がとられることもあります。
任意売却とは、債権者と金融機関とが話し合い、住宅ローンの残債がまだ残っている状態のまま、抵当権を解除してもらうという方法です。
よく競売と勘違いされるのですが、簡単にいえば、
- 競売は、金融機関が担保にしている不動産を差し押さえ叩き売る
- 任意売却は話し合いの上、通常の不動産取引と同じように家の売却をする
ということになります。
任意売却では、通常の不動産取引と変わらない売買ができるため、高値での売却も期待できます。金融機関にとってもメリットがあるのです。
債権者としても、
- 競売のように周囲に住宅ローンが払えなくなったことがバレる心配がない
- 任意売却後は残った残債についての支払いも考慮してもらえる
- 引っ越し費用などを負担してもらえる場合がある
などのメリットがあります。
ただし、任意売却をするためには、「住宅ローンを滞納(金融機関も了承済み)」しなくてはいけませんので、信用情報機関に事故情報が載ることになってしまいます。
そのため、任意売却後は一定期間の間、新たなローンを組むことができませんし、クレジットカードを作ることも出来なくなりますので注意してください。
3.離婚後も現在の家にどちらかが住み続けることのリスクとデメリット
離婚という決断をした以上、今後はお互いあまり関わりたくない場合もあるでしょう。離婚時には、「もう顔も見たくない!」という関係まで夫婦中が悪化している夫婦も少なくはありません。
そのため、「家やマンションなどの不動産はきれいに売却して離婚してお互い第二の人生を歩む」という方法が離婚時にはベストな選択といえます。
事実、離婚後も夫、妻のどちらかが現在の住居に住み続けた場合、色々なリスクを伴います。
次のパートナーを見つけずらくなる
「離婚後は一生独身を貫く」と考える方は少ないです。
やはり、「よいパートナーと出会えたならば、もう一度恋愛もしたいし結婚もしたい」と思うかたがほとんどではないでしょうか。
しかし、その際に問題となるのが残された家やマンションです。
たとえ離婚は成立しているとしても、前の家庭、家族の面影が残る家に新しいパートナーは住みたがるでしょうか。
また、離婚後も妻が現在の家に住み続けていた場合、住宅ローンの問題も重くのしかかってきます。
現在、妻が住んでいる家のローンを払いながら、新しいパートナーとの新居も考えなければなりません。
二重に住宅ローンを組むのは、経済的にも非常に負担がかかります。
しかし、夫に新しいパートナーが見つかったからといって家を売却するといっても、元妻が素直に承諾してくれるとは限りません。
また、妻と賃貸借契約を結んでいた場合、妻には借家権があります。そうなると、おいそれと出て行ってくれと言えません。
夫婦共有の財産というものは、離婚時にきれいにしておいた方が、その後の人生の自由度が格段に上がるのです。
経済的変化での住宅ローンの重圧
現在、住宅ローンを問題無く支払えている状態でも、将来的には何か起こるかは誰にも分かりません。
病気や事故、リストラなどで収入が激減する可能性はゼロでは無いのです。
そのような場合、賃貸であれば家賃の安いところに一時期的に引っ越すということもできますが、住宅ローンを抱えている場合、そういう訳にはいきません。
事実、リストラなどで住宅ローンの支払いが滞ってしまい、自宅が金融機関に競売にかけられるケースは少なくはありません。
金融機関からの督促が辛くて眠れない日々を過ごしている方も多いのです。
また、いくら離婚したといえど、いきなり妻や子供たちに住んでいた家が突然無くなってしまうという経験はさせたくないものです。
それならば、離婚時に自宅は売却してしまい、養育費や生活費の援助のほうに力を入れたほうが将来的に何かあった場合も融通が利きます。
離婚で家を売却 よくある質問
離婚で家を売却するときによくある質問をまとめました。
離婚が家の評価額に影響をおよぼすことはありますか?
離婚が原因で家の評価額が下がることはありません
家の査定価格や評価額というものは、築年数、周辺相場、路線価、過去の売却実績などをもとに算出されるものです。
住んでいた家族が離婚した家という理由で評価額が下がることはありません。
家の購入時に、自分で頭金を出した場合の財産分与はどうなるの?
購入時に負担した頭金は財産分与の対象外となりますが、少しだけ注意が必要です
家の購入時に、自分の両親からの援助や結婚前からの貯金で頭金を負担した場合には、特有財産として扱われるため財産分与の対象外となります。
ただし、家やマンションなどの不動産は、経年によって価値は下がりますから、頭金の価値もそれに応じて減額の調整が必要です。
例えば、
- 頭金1,000万円を自分の貯金から負担して、4,000万円のマンションを購入した
- 離婚時のマンションの売却価格は2,000万円でローンの残債は無し
- マンション価値は購入時の1/2になっているため、頭金1,000万円の価値は同じく1/2で500万円で計算
- 2,000万円ー500万円=1,500万円が財産分与の対象となる
このような考え方が一般的です。
離婚成立後、妻が現在の家に住むことになり、ローンは私が支払っています。この場合でも、住宅ローンの控除を受けることができますか?
自身が居住していない家の住宅ローンの控除は受けることができません。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用には、以下の要件が必要となります。
新築又は取得の日から6か月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
つまり、例え住宅ローンを支払っていたとしても、自分自身がその家に住んでいなければ、住宅ローンの控除は受ける事ができないということです。
理不尽なように思えますが、現在の税法上では致し方ないことと諦めるしかないのが現状です。